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2016-07-01

免疫抑制の下、がん細胞は増殖

Weight of disadvantageがんは免疫力が低下した結果、発症するのですが、同時にがん自体が免疫を低下させて、NK細胞を惑わせる作戦を取っています。それががんの本質ともいえる免疫抑制です。

がんが免疫細胞を攪乱
免疫は複雑かつ精緻なシステムであり、免疫細胞は互いに信号物質であるサイトカインを介してコミュニケーションを取り、目的を共有して行動します。何らかのきっかけで免疫より優勢になったがんは、偽の信号でそのコミュニケーションを撹乱して、強い免疫抑制をかけ、自分にとってさらに有利な環境を作ります。それはどのようなメカニズムなのでしょうか。

CTLは異常細胞の壊し屋
免疫抑制を知るには、免疫細胞の中でもT細胞を細かく見ていく必要があります。T細胞には複数のタイプがあり、キラーT細胞(CTL)はウイルス感染細胞やがん細胞の一部を攻撃します。但し、CTLはNK細胞のように細胞を見分けて攻撃するわけではありません。CTL1種類ごとにひとつの標的物質があり、その標的物質を目印にして、細胞を壊しに行くのです。

ヘルパーT細胞が免疫の舵取り
ヘルパーT細胞は他の免疫細胞を活性化するのが役割ですが、どの仲間を活性化するかで、免疫の主な攻撃目標が変わります。ヘルパーT細胞のうち、Th1はCTLを活性化するタイプです。そして、Th2は異物に対する抗体を作るB細胞を活性化します。

制御性T細胞は免疫のブレーキ
制御性T細胞(Treg)は免疫が暴走しないように、活動に適度なブレーキをかける役割を担っています。免疫には常に一定の抑制がかかっています。能力を100%発揮すると、すぐに炎症などの反応を起こして、生活に支障を来たすからです。

免疫細胞のコミュニケーション
免疫細胞の相互の連絡網の一部を切り出すと、例えば次のような具合です。樹状細胞やマクロファージがIL-12(インターロイキン12)を放出すると、Th1が増え、そのTh1はIL-12やINF-γ(インターフェロン-γ)を出して、CTLを活性化します。逆にIL-4(インターロイキン4)やPGE2(プロスタグランジンE2)の働きでTh2が増えると、CTLを活性化するTh1の作用は弱まります。TregはNK細胞やCTLを活性化するIL-2を減少させ、攻撃にブレーキをかけます。

免疫抑制でがん細胞の天下に
がんは偽の信号でこのような免疫細胞のコミュニケーションを乗っ取り、自分を攻撃しに来るNK細胞やCTLが活性化しないように、強い抑制をかけているのです。がん免疫の主役であるNK細胞も、補助部隊のCTLも機能しなくなってしまえば、がん細胞に天敵はいなくなります。妨害されることなく増殖を続け、腫瘍を育てることが出来るわけです。これががん患者さんの体内で起こっている免疫抑制という現象です。

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