がんの引き金はこんなにある
細胞のDNAに傷をつけて、がん化の引き金となる要因をイニシエーターといいます。イニシエーターは様々ですが、それ以上にがんの発症に関わっているのが、免疫の状態です。
イニシエーターとプロモーター
「タバコを吸うとがんになる」とか「食品中の発がん性物質」といったことはよく話題になります。そして、「がんの原因」といういい方もします。しかし、直接的な因果関係がないのに、漠然とがんの原因にしていることが多いものです。私たちが考えているがんの原因には、イニシエーター(発がん因子)とプロモーター(発がん促進因子)があります。イニシエーターとは細胞のDNAに傷をつけて、がん化のきっかけを作る要因のことです。タバコの煙や環境の中の発がん性物質、アルコール、アスベスト、紫外線、放射線などが該当します。がん化の直接の引き金といってもいいでしょう。プロモーターとは細胞ががん化しやすくなる要因です。強いストレス、食事の偏りや運動不足、肥満といった好ましくない生活習慣はプロモーターに当たります。
化学的、物理的なイニシエーターとは
イニシエーターには主に化学的因子、物理的因子、生物学的因子があります。例えば、タバコの成分やアルコール、アスベストなどは化学的因子です。食品中の発がん物質として保存の悪いピーナッツに生えるカビ毒のアフラトキシンが知られていますが、こうい成分も化学的因子です。紫外線や放射線などは物理的因子です。日焼けを繰り返すこと、また皮肉ですが過度のX線検査も物理的イニシエーターになりえます。
ピロリ菌や肝炎ウイルスもイニシエーター
生物学的因子はがんの原因になる一部の細菌やウイルスのことです。日本人には胃がんが多いのですが、その大きな理由としてヘリコバクター・ピロリ、いわゆる「ピロリ菌」の感染が知られています。ピロリ菌に感染すると、慢性胃炎や胃潰瘍などの原因となり、胃がんのリスクが高まるためです。また、肝細胞がんの70~80%は慢性のC型肝炎、またはB型肝炎が進んだ結果と考えられています。
がん予防に重要なのは免疫
このようにがんの引き金になることはいろいろあります。それらに気をつけることは大事ですが、がん予防にもっと重要なのは免疫です。仮に細胞ががん化したとしても、私たちの体内ではNK細胞によるがん免疫が働いていて、がん細胞を見つければ殺してしまいます。その免疫力が低下した時こそ、本当のピンチなのです。