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2020-08-17

大きくて長命なゾウが、がんになりにくい理由


体が大きくて、細胞の数が多く、寿命が長くて、細胞分裂の機会が多いゾウは、理屈から考えればがんになり易いはずです。しかし、そうではない理由がありました。

大型で長命の動物が、がんになり易いわけではない
がんは遺伝子の病気です。生命を維持するため、細胞を分裂・増殖させる際、生命の情報といえる遺伝子が記録されたDNAを複製しますが、その際に正常にコピーが行われず、遺伝子に変異が起こることがあります。これが積み重なって、細胞はがん化していくのです。ヒトに限らず様々な動物はがんになります。例えばゾウのように体が大きい(細胞の多い)動物や、寿命が長い(細胞分裂の回数が多い)動物は、それだけ遺伝子の変異が起こる機会が多くなるので、がんになる確率が高くなるはずです。しかし、ゾウがヒトよりがんになるわけではありません。このことは、英国オックスフォード大学のリチャード・ピート教授が「ピートの逆説」として提唱しています。

ゾウのがん抑制遺伝子「p53」は20組もある
この「ピートの逆説」を裏付けるように、米国ユタ大学のジョシュア・シフマン教授らはアフリカゾウのゲノムを調べた結果、がん抑制遺伝子「p53」が、ヒトでは1組しかないにもかかわらず、20組もあることを明らかにしました。P53はゲノムの守護神といわれるように、遺伝子の変異を速やかに修復したり、修復が出来ない場合はアポトーシスに誘導したり、細胞が分裂・増殖する周期を止めたりと、がんを未然に防ぐ上で、重要な役割を担っています。多くのがん患者は、このp53が欠けたり壊れたりしています。20組もあれば幾つかに変異があってもバックアップが可能で、がんを未然に防げるというわけです。

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