2023-01-23
がんワクチン、CAR-T、免疫チェックポイント阻害剤の限界
がん免疫の主役はT細胞ではなくNK細胞です。
T細胞の攻撃力は限定的
新型コロナウイルスの世界的な感染ではmRNAによるワクチンが実用化されました。mRNAは蛋白質の設計図であり、投与することで体内で様々な蛋白質を合成します。新型コロナウイルスの抗原となる特徴的な蛋白質を作らせれば、免疫はそれを目印に、異物として攻撃するのです。この技術は、がんに対しても研究されており、近い将来、mRNAによるがんワクチンが登場するでしょう。患者のがん細胞を解析し、特徴的なネオアンチゲンといわれる抗原を抽出し、それに応じてオーダーメイドでmRNAを作るのです。このmRNAががん細胞の抗原を作り出すと、免疫細胞のT細胞がそれを認識し、がん細胞を叩きはじめます。しかし、このワクチンの限界は、T細胞を基本的に刺激する点です。T細胞は数の上では大多数を占める免疫細胞ですが、膨大なタイプがあり、目の前にがん細胞があったとしても、自分が抗原を認識したものしか攻撃せず、攻撃力は極めて限定的です。活性が高ければ、目の前の異物を無条件に傷害するNK細胞には及びません。遺伝子の改変で攻撃力を高めるCAR-T、がんによる免疫の抑制を解除する免疫チェックポイント阻害剤……いずれも対象としているのは、取り扱いがNK細胞より容易なT細胞です。そして、それらの奏効率の低さは、そのままT細胞の攻撃力を物語っています。将来、目指すべきはがん免疫の主役であるNK細胞をいかに活性化し、本来の攻撃力を回復させるかにほかなりません。
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