toggle
2022-11-16

欧米では抗がん剤は使われていないという話の真偽


抗がん剤は副作用の観点から批判されがちです。

日本では抗がん剤が普通に使われている

抗がん剤の副作用については広く周知されるようになりました。抗がん剤は、がん細胞が正常細胞よりも盛んに分裂する性質を利用し、分裂中の細胞を傷害します。しかし、分裂中であれば正常細胞でも巻き添えになり、毛根や内臓の粘膜の細胞、さらにはがんと闘う上で重要な免疫細胞など、頻繁に分裂する細胞も、ダメージを受けます。さらには、分裂していないがん細胞は生き延びて、完全には排除出来ないため、やがてそこから再発や転移が起こります。こうした抗がん剤への批判のひとつとして欧米では抗がん剤は使われておらず、日本だけが抗がん剤を多用しているという話を、SNSや雑誌ではよく目にします。

欧米では分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤が主流

確かに欧米ではこうした古典的な抗がん剤=殺細胞剤の使用は減少傾向にあります。しかしながら、標準治療の中で依然として使われていることは事実です。一方でがんの新薬は、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤が中心であり、欧米ではそちらが主流になっています。分子標的薬は、がん細胞の異常な増殖に関わっている蛋白質の働きを阻害し、がんの進行を食い止めます。免疫チェックポイント阻害座は、がん細胞が免疫細胞の邪魔をしている状態を解除し、患者自身の免疫でがんを排除出来るようにします。いずれも殺細胞剤のように患者を著しく消耗させる副作用はありません。

「新しいタイプの抗がん剤」の意味

問題は、一部の医療関係者が、抗がん剤の使用は欧米でも変わっていない、増えていると反論する際に、こうした分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤を「新しいタイプの抗がん剤」と称して一緒にしていることです。抗がん剤といっても時代の中で進化し、様々なタイプが生まれていることを知っておきましょう。

Share on Facebook0Tweet about this on Twitter0
関連記事