がんは切るのが正解なのか、切らないのが正解なのか?
膀胱がんが肺に転移したことを公表した小倉智昭さんですが、医師の勧めた全摘を躊躇し遅らせたことが、肺転移の一因ではないかとコメントしています。
全摘ではなくまず内視鏡で一部切除
キャスターの小倉智昭さんが、膀胱の肺転移を公表しました。2016年に膀胱がんと診断され、医師からは全摘を勧められましたが、QOLを考慮し、内視鏡での部分的な切除を行った結果、がんは再発し、2018年には全摘しています。小倉さんは、この時の決断の遅れが肺転移の遠因ではないかとコメントしています。確かに手術は最も効率よくがん細胞を減らせる手段です。温存していた膀胱に散らばっていたがん細胞が、全摘までの間に全身に広がっていったと考えるのは自然なことでしょう。
手術出来るがんは手術するのが基本
一方、数か月前には進行した食道がんで手術を医師から勧められたライターが、それを疑問に感じて拒否し、別の病院を受診した結果、化学放射線療法で生還したと、雑誌などに寄稿していました。治療の結果が良好でも、1年少々しか経過しておらず、まだ経過観察を求められる段階で生還したなどというのは、いささか早計かと思います。確かに標準治療のガイドラインでは手術出来るがんは手術して、まずはがん細胞を一気に減らすのが優先されます。いいかえれば進行がんとはいえまだ手術出来る段階だったのです。このライターの主治医は、生存率などの観点から最も確率の高い選択肢を提示したのでしょう。素人考えで手術を全否定するような論調には違和感がありました。
何を優先するかは、患者が決めること
とはいえ、手術とて万能ではありません。手術自体に合併症や事故のリスクもあります。また、切除した体は元には戻らない場合があります。膀胱がんであれば自然な排尿が出来なくなったり、性機能に障害が出たりすることもあります。食道がんは大きく胸を切り開くので、手術自体が大きな負担になります。嚥下に支障が出ることもあるでしょう。生存率をとるか、QOLとリスク回避をとるか、それは医師が決めることではなく、患者自身がしっかりと考えて判断するしかないのです。