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2021-05-26

他人のiPS細胞でがんを攻撃するCAR-Tを作り出す技術が開発される


患者の免疫細胞を体外で強化して戻す免疫細胞療法は、時間や手間がかかるという難点があります。また、がん患者の免疫細胞は弱っており、質も量も十分でないため、培養の元となる免疫細胞を採取出来るかどうかの問題もあります。

遺伝子を改変して拒絶反応が起こらないようにする

がんは、免疫が十分に機能しなかった結果、異物であるがん細胞が生き延びて、分裂・増殖を繰り返した結果です。また、がん細胞は生き残るために、様々な手段で免疫を抑制するため、がん患者の免疫は極めて低下しています。そこで、がん患者の免疫を回復させる治療が開発されていますが、がんを攻撃する免疫細胞を、体外で培養して強化した後に投与するという手法があります。問題は、がん患者の免疫細胞は質、量ともに十分ではないことに加え、培養に時間がかかるということです。他人の免疫細胞を使う場合、異物として拒絶反応を起こしてしまいます。そこで、まずiPS細胞の段階で遺伝子を改変して、他人の体内でも拒絶反応が起こらないようにした上で、T細胞(免疫細胞の一種)に変化させ、さらに遺伝子を改変して、特定のがん細胞に対する攻撃力を高めたCAR-Tが、京都大学iPS細胞研究所によって開発されました。既にCAR-Tとして実用化されている血液のがんの治療薬「キムリア」は、患者自身のT細胞から作るので、どうしても時間と費用がかかってしまいます。それに対してこの手法は大量生産とストックが可能で、すぐに治療が行えるという長所があります。

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