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2020-02-17

がんの自由診療を全て怪しいと決めつけることの愚かしさ

がん治療の実情を知らず、浅はかな報道をすることは、患者の治療機会を奪うことになります。

標準治療で助からないから、いろいろな治療が生まれる

先日、2つの雑誌でがんの自由診療、特に免疫細胞療法を激しく批判する記事が掲載されました。高額な治療なのに期待したような効果がなく、結局、患者は亡くなったとか、エビデンスがないからといったことを根拠に、困っている患者を食い物にしているという内容でした。目を通してみたところ、否定する根拠があまり科学的でないという印象を拭えませんでした。

標準治療のガイドラインに従っても、全く効果がなく、抗がん剤の副作用に苦しんだ挙句、助からない患者はたくさんいます。効果がなかった一例を挙げ、高額であるということでマイナスの印象を与えて、否定に持っていくのは、あまりに稚拙だといえます。

標準治療は、がん克服の鍵である免疫を低下させます。がん細胞が散らばった進行がんをそれだけで克服することが困難だからこそ、がんで亡くなる方はなかなか減らないのです。結果、いろいろな治療が生まれ、患者がそこに生きる道を見出そうとしているのです。

LAK療法は、効果が急激に出過ぎて危険だった

免疫細胞療法の原点は1980年代に米国で開発されたLAK療法がその原点といえます。米国で国家プロジェクトとして行われた大規模な臨床実験では、抗がん剤の効果がなくなった末期のがん患者数百名に対して、この治療を行ったところ、ほぼ全員の患者に腫瘍が縮小したり消失したりという結果が出ています。問題はこのプロトタイプといえる治療は、あまりに巨額の費用がかかる上、効果が急激に出過ぎて危険だということで実用化されなかったのです。後年、LAK療法はあまり効果がなかったといわれるのは、事実と異なります。

ただ、自由診療で行われている免疫細胞療法の多くは、がんを征圧出来るだけの力があるのかが疑問です。がん細胞を排除する要となるNK細胞の量や活性が不十分で、名ばかりのNK細胞療法であることが多いからです。そうした怪しい治療が批判され、医療の世界から退場させられるのは当然のことでしょう。しかしながら、自由診療や免疫細胞療法をひと括りにして、無知な批判を行うことは、患者の治療機会を奪うことであり、怪しい治療を行っていることと同罪なのです。

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