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2019-12-03

佐賀大学ががんゲノム医療の治験を実施

がんゲノム医療が推進され、がん遺伝子パネル検査は保険適用になりましたが、現状ではまだまだ問題が残されています。

遺伝子の変異によってがん治療を選択
佐賀大学医学部附属病院ではがん患者の遺伝子の変異を調べ、それに応じた分子標的薬などを使用する治験を行っています。国を挙げてがんゲノム医療が推進される中、今年はがん遺伝子パネル検査が保険適用になりました。がんは遺伝子の変異によって細胞ががん化することが原因です。従って、どんな変異かを調べることで、がんの特徴を知ることが出来ます。近年、がんの新薬はこの遺伝子の変異に応じて開発されており、これによって効果の期待出来そうな治療を絞り込むことが出来るわけです。

同じ部位のがんでも性質が同じとは限らない
保険診療におけるがん治療、即ち標準治療は、がんの種類(部位)と進行の度合いによって内容が決まっています。しかし、がん細胞は実に千差万別であり、同じ部位に出来たがんだからといって、個々のがん細胞の性質が同じとは限りません。患者が違えばもちろん、同じ患者で同じ部位のがんであっても異なる場合があるくらいです。標準治療ではがんで亡くなる方がなかなか減らない中、国ががんゲノム医療に大きく舵を切ったのは、このような事情が背景にあります。

ハーセプチンは2種類のがんにしか使えない
佐賀大学の治験は、がん細胞がHER2という蛋白質を発現している患者を対象としており、既に保険適用になっている胃がんや乳がんなどは対象外となっています。HER2を目印に作用する分子標的薬といえば、進行の速い乳がんに対する治療を劇的に変えたといわれるハーセプチンがあります。HER2は進行の速いがんにはよく見られ、欧米ではハーセプチンは様々ながんに使われ、多くの症例があります。ところが、我が国では乳がんや胃がん以外には保険適用でないため、使用する上では費用を含め様々な障害があります。HER2が陽性のがんなら簡単に使えるわけではないのです。

部位を問わず、遺伝子の変異に応じて保険適用を
近年、がんの新薬は開発費が膨れ上がっています。オプジーボやキムリアのように年間数千万円とはいかなくても、一般の方が自由診療で費用を負担するのは難しいでしょう。実は、がんゲノム医療の問題点のひとつはそこにあり、がん遺伝子パネル検査で効果が期待出来そうな分子標的薬が見つかっても、保険適用でなければ莫大な費用を負担出来ず、治療を諦めざるを得ないケースが出てくる可能性が大きいのです。先日、免疫チェックポイント阻害剤のキイトルーダが、一定の遺伝子の変異が確認出来れば、部位を問わず保険適用になりました。これこそががんゲノム医療の進むべき方向で、佐賀大学の治験もその追い風になってもらいたいところです。

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