間もなく保険適用になるがんゲノム医療で何が出来るのか?
間もなく保険診療で受けられるようになるがんゲノム医療。その概要と問題点について説明します。
保険診療なら多くの方が受けられるようになる
国が推進してきたがんゲノム医療が、いよいよ保険適用になります。昨年12月、国立がん研究センターとシスメックが開発したNCCオンコパネルと、中外製薬が扱うファウンデーションワンCDxが、製造・販売の承認を取得し、数か月のうちには保険診療で実施出来る見込みです。これまでは先進医療や自由診療で数十万円、場合によっては100万円以上の費用がかかっていたのが、これでかなり受けやすくなるでしょう。保険適応であれば高額医療費制度の対象にもなるので、実際の負担はさらに軽くなります。
げんゲノム医療で個々の患者に最適な治療を
がんゲノム医療で具体的に出来るのは、ひとりひとりのがんの性質を遺伝子のレベルで調べ、それに最適な治療を選択することです。がんは遺伝子が変異し、際限なく増殖するようになった異常な細胞の集まりです。そして、近年のがん治療薬は、遺伝子の変異で作られるがん細胞特有の蛋白質などを目印に作用する分子標的薬が主流になりました。従来の標準治療ではがんの部位別に治療が決まっていましたが、がんは患者ひとりひとりが異なる病気といっても過言ではありません。同じ部位のがんでも同じがん治療薬が効くとは限りませんし、遺伝子の変異が同じであれば、同じ分子標的薬が奏効する可能性があるのです。がんで亡くなる方が、なかなか減らない中、厚生労働省はがんの個別医療としてゲノム医療を推進しているのです。
有効な治療が見つかっても、それが保険適応でない場合が
がんゲノム医療でより適切な治療が受けれれるようになるといっても、まだまだ課題は山積しています。どんな患者でも受けられるわけではなく、標準治療を受けて、既存の選択肢がなくなった場合が対象なので、早い段階から最適な選択肢を見つけるというわけにはいきません。また、仮に効果が期待出来る選択肢が見つかった場合でも、それが保険診療で受けられるとは限らないのです。オプジーボやキムリアで周知されましたが、近年、がん治療薬の価格は高騰しています。手段は見つかっても、経済的な理由で諦めざるを得ない患者が出てくることは考えられます。がんゲノム医療を本当に活かすためには、がん治療薬を遺伝子の変異に応じて保険適応にするくらいの取り組みが必要でしょう。