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2017-09-14

抗がん剤は「効かない」ことではなく「効く」ことが問題

標準治療を批判する際に、よく主張されるのが、抗がん剤は効かないということです。果たしてそうなのでしょうか。

標準治療の限界に直面し、怪しい代替医療に頼る
著名人ががんで亡くなり、代替医療など独自の治療に頼っていたりすると、とかくその是非が論じられがちです。反対に週刊誌の記事では標準治療を激しくバッシングする内容も目につきます。標準治療だけでは進行がんを克服することは困難であり、そこに直面した患者が、怪しい治療も含め玉石混交の代替医療に頼った結果、双方への批判が繰り返されるのでしょう。標準治療を否定する際に、頻繁にいわれるのは、抗がん剤は効かないということです。果たしてそうなのでしょうか。

抗がん剤はがん細胞だけでなく正常細胞も障害する
抗がん剤は、がん細胞が正常細胞よりも盛んに分裂・増殖することに着目し、分裂中の細胞を傷害することで、がん細胞を減らします。当然、分裂中でなければがん細胞は生き残るので、投与は何クールか繰り返されますが、全てのがん細胞を死滅させることは出来ません。生き残ったがん細胞は再発や転移の原因となります。また、抗がん剤は、分裂中であれば正常細胞まで傷害するため、脱毛や吐き気、下痢といった副作用を引き起こし、体を衰弱させます。

抗がん剤という強力な武器は捨てるべきではない
根治出来ないこと、副作用が起こること、そしてやがては薬剤耐性が生じて効かなくなることから、抗がん剤を「効かない」と断じているわけです。確かに進行がんに対しては、抗がん剤は限界があるのです。しかし、全身のがん細胞を直接攻撃するという意味では、抗がん剤は最も強力な手段です。いい方は乱暴かもしれませんが、効いているからこそ副作用も起きるわけです。強い治療はそれだけ体にも負担がかかかります。「効く」をどう定義するかにもよりますが、「効く」からといってそれだけに頼っていたら、いずれは出来る治療が尽きてがん難民になってしまいます。抗がん剤などの標準治療だけではなくそれを補完する治療を含めて治療全体を組み立てていくことが必要です。がん治療、特に進行がんが相手となると総力戦です。標準治療という強力な武器を捨てることは得策ではありません。

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