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2017-07-27

怪しげながん治療はなぜ後を絶たないのか

何とかがんを治したいという患者の気持ちに付け込んで、効果がないのに高額な費用がかかる治療はなかなかなくなりません。どうしてなのでしょう。

無届けで他人の臍帯血を移植した医療機関
先日、乳がん治療中だったアナウンサーの小林麻央さんが亡くなりました。乳がんと診断された後も、標準治療を拒否して、怪しい代替医療を受けていたことが、症状を悪化させたのではないかといわれています。また、他人の臍帯血を無届けでがん患者に移植した医療機関や、無届けで免疫細胞を培養した会社などもニュースになりました。こうした怪しげながん治療は効果が期待出来ないばかりか、高額な費用がかかることも問題視されていますが、どうして後を絶たないのでしょうか。

末期になると標準治療は何もしてくれない
結論からいえば、進行がんと闘う上では、標準治療だけでは限界があるからです。確かに標準治療は国がお墨付きを与えた治療です。しかし、手術や抗がん剤では目に見えるがんしか取り除けず、抗がん剤などの化学療法にしてもがん細胞を根絶出来るわけではありません。やがてはそれが再発や転移の原因となるのです。しかし、標準治療では症状や治療の経緯によって出来ることが決まっています。患者が治りたいと思っていても、標準治療ではそれ以上のことはやってくれないのです。納得出来なければ標準治療以外に出来ることを探して試してみるしかないのです。

標準治療以外を認めようとしない一部の医師
そのような患者の切実な思いに付け込む怪しげな代替医療は、すぐにでも排除すべきだと思います。しかし、それと同じように問題なのは標準治療以外を頑なに認めようとしない医師が多いことです。勉強不足なのか、標準治療に対して原理主義のような思い入れがあるのか、標準治療の欠点を補完するような治療に対しても、十把一絡げに否定する視野の狭さがあります。そんな医師も患者の治りたい、生きたいという気持ちを無視していることを自覚すべきでしょう。

保険診療の垣根を越えて、治療の評価と設計を
標準治療は保険診療であり、保険適応になるまでには相応の段階を経ることが求められるというのは致し方ないかもしれません。とはいえ、進行がんを克服するためには、標準治療だけでは不十分であることははっきりしています。標準治療を行っている医師は、まずはその現実に向き合い、患者を救うための最短距離を進むべきではないでしょうか。医療全体が保険診療、自由診療の区別なく治療を適切に評価し、患者ひとりひとりに応じた治療を組み立てられるようになれば、怪しげな治療が出てくる余地などなくなるでしょう。

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