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2017-04-21

光免疫療法への疑問3 効き過ぎるとかえって危険

過去2回、光免疫療法について理論の面から素朴な疑問を述べてみました。3回目は実用性という側面から考えてみます。


光免疫療法はがん細胞を一瞬で破壊する

光免疫療法ではがん抗原に対応する抗原とIR700というを結合させたものを投与し、IR700ががん細胞に集まったところで、近赤外線を当て、それに反応して、IR700が発する熱で、がん細胞を破壊します。この治療のメリットはがん細胞だけを狙い撃ちに出来ること(それを実現する抗原と抗体の問題については以前に言及)、そして比較的安価に受けられるのではないかという実用性です。しかし、実用性についてひとつ懸念されるのが、光免疫療法ががん細胞を一瞬で死滅させるという点です。

大きな腫瘍が一気に崩壊すると、生死に関わる
大きな腫瘍を一気に崩壊させ、がん細胞が分解されると、大量のカリウムなどが血中に流れ出ることで、生死に関わる腫瘍崩壊症候群を招く可能性があります。因みに免疫細胞療法の原点といわれるLAK療法が現実的でないとされたのは、莫大なコストのかかる大がかりな治療であったことに加えて、この安全面の問題でした。大きな腫瘍を叩くには、こうした副作用を考慮しつつ、タイミングや治療強度のバランスを調整する必要があります。また、LAK療法ではICUで患者の状況を監視しながら、治療を行わざるをえませんでした。

実験から実用化までには長い道程が
がん治療中の方、特に進行がんであっても諦めずに闘っている方にとって、画期的な治療が開発されたという情報は、福音といっても過言ではありません。とはいえ、理論はもちろん、実験の段階であっても実用化までには遠い道程が待っていることを理解しておく必要があります。それ以上に問題なのはよく効くといわれる非小細胞肺がんにであっても、2割程度の患者にしか効かず、逆に生死に関わる副作用のリスクさえあるオプジーボを、「夢の新薬」と持ち上げるメディアの姿勢ではないでしょうか。光免疫療法に関しても報道がいささか過剰な感はあります。

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