がん細胞が分裂・増殖し、腫瘍が大きくなっていく際には、血管を新しく形成し、血液によって酸素や栄養を運んでいくことが不可欠です。血管を新たに形成したり、傷ついた血管を修復する際には、体内の化学シグナルによって制御が行われますが、がん細胞は自らこの化学シグナルを出すことで、腫瘍を成長させたり、浸潤・転移したりしているのです。血管新生が行われる際には、がん細胞による化学シグナルを伝達する物質が、正常細胞の表面にあるレセプターに結合しなければなりません。この物質に先回りして結合し、レセプターの活性化を邪魔することで、血管が新しく作られないようにして、腫瘍の成長を遅らせるのが、血管新生阻害剤です。がん細胞による化学シグナル伝達物質を標的に作用するため、分子標的薬のひとつといえます。従来の殺細胞剤とは全く作用機序が異なるため、一般的にいわれる抗がん剤の副作用はありません。しかし、正常細胞の血管新生も阻害するため、出血や動脈の血栓、高血圧などのリスクがあるといわれています。大腸がんの治療に使われるアバスチンは、2007年に製造・販売が承認された世界初の血管新生阻害剤であり、がん治療薬の中ではベストセラーとなっています。
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