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2016-07-01

3.自らの免疫でがんを治す

,免疫の力でがんを治そうと、前向きに考えるのは悪いことではありません。しかし、がんが免疫を抑制している体内の環境を一変させ、免疫力を回復することは簡単ではありません。

笑って、食べて、温めて免疫力は回復するか
がんが免疫の病気であることや、免疫力ががん治療の鍵を握っていることは、今では広く常識になっているといっても過言ではないでしょう。がん治療を念頭に「笑って免疫力を高めましょう」「免疫のつく食べ物をとりましょう」「体を温めましょう」などという方がいますが、実際に効果があるのでしょうか。

生活習慣の改善だけでがんは治せない
がんになって精神的に落ち込んだままでいたり、極端な食事療法で栄養を十分摂らなかったりすると、病気と闘う上で大切な体力が失われてしまいます。免疫力を落とさないためには、心理面や栄養に配慮することは不可欠です。しかし、生活上の工夫だけでがんを治すことは難しいと考えたほうがよいでしょう。

免疫抑制の克服が課題
がん患者の体内ではがんが免疫に強い抑制をかけて、がん免疫の主役であるNK細胞の活性を低下させています。その「免疫抑制」はリラクゼーションや食事、入浴程度ではなかなか阻止出来ないくらい強力なのです。一般論として前向きに考えるのはよいことですが、がんになったら生活の見直しは当然のこととして、がん免疫そのものの回復を考える必要があります。

がんと感染症では免疫が異なる
免疫というと感染症に対する免疫をイメージする方が多いのですが、がんに対する免疫はそれとは別のシステムです。感染症免疫は細菌やウイルスのような外敵に対する防御システムです。細菌が体内に侵入してくると、体液中の抗体や補体が無毒化して溶かしたり、食細胞(好中球やマクロファージ)が飲み込んで処分したりします。ウイルスに感染した細胞は、サイトカインを出して、その増殖を抑え、キラー細胞が感染細胞を破壊して、感染の拡大を食い止めます。よく名前を聞く樹状細胞は、主にこの感染症免疫の司令塔として機能します。

がん免疫の主役はNK細胞
がん免疫の相手は性質を変えて暴れ出した自分の細胞です。その主役であるNK細胞は、活性が高ければ、何十種類ものセンサーを駆使して、細胞の表面にある物質のバランスを読み取り、がん細胞と正常細胞を見分けます。そして、がん細胞には多量のグランザイムという物質を注入して破壊します。がんはこのNK細胞の活性を低下させ、識別・攻撃から逃れています。免疫でがんを治せるかどうかは、NK細胞の活性をいかに高めるかにかかっているのです。

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