5.抗がん剤が効かなくなる薬剤耐性
抗がん剤はやがて効かなくなるタイミングが来ます。その薬剤耐性を想定しながら、薬の効果を最大に引き出し、他の治療に切り換える治療設計が望まれます。
抗がん剤は休みながら繰り返す
抗がん剤治療は同じ薬(または薬の組み合わせ)の投与を何クールか繰り返します。そもそも、殺細胞剤は分裂中の細胞を殺すので、1回薬を投与しただけでは、がん細胞を一掃することは出来ないからです。また、殺細胞剤は必ず副作用を伴います。そのため、連続投与は出来ず一定の休薬期間を挟みながら、複数回投与します。
抗がん剤が効かなくなる
副作用の克服は抗がん剤の大きな課題です。しかし、抱えている問題は副作用だけではありません。殺細胞剤を投与すると、がん細胞がぐんと減って、腫瘍が小さくなったり、成長の勢いが止まったりします。ところが、どこかのタイミングで効かなくなる時が来ます。その薬では死なないがん細胞が増えてくるためです。このようにがん細胞が薬に強くなる現象を「薬剤耐性」といいます。
別の薬もすぐ効かなくなる
薬剤耐性が現われると、がんは一転して勢いよく増殖を再開します。他の薬を使うなり、何らかの手を打つ必要があります。一般に抗がん剤治療ではファーストライン、セカンドライン……と薬の候補が準備されていて、薬剤耐性が生じると、次の薬に切り替えていきます。しかし、一度薬剤耐性を得たがんには、次の薬もすぐに効かなくなる傾向があります。そして、最終的には使える薬がなくなってしまうのです。
手は尽くしたといわれる前に
薬剤耐性の出現は、手は尽くしたといわれてしまう典型的なパターンです。そうなるとホスピスに行くしかなくなってしまいます。そうならないためには前もって他の治療法(特に殺細胞剤以外の全身療法)を視野に入れた治療設計が必要です。
薬剤耐性対策として免疫細胞療法を
例えば、抗がん剤でなるべくがん細胞を減らしてから、自由診療の免疫細胞療法で後を引き継ぐという方法があります。しかし、薬剤耐性が出現する段階まで、徹底的に標準治療をやると、免疫細胞は相当ダメージを受けていますから、免疫細胞療法が出来なくなっている可能性があります。どの段階で免疫細胞を採取し、免疫細胞療法の準備を始めるかなど、綿密に治療設計を考えておくことが望ましいといえるでしょう。
免疫細胞療法と抗がん剤の相乗効果
一部の免疫細胞療法では抗がん剤の休薬期間に少量の免疫細胞を点滴する合間治療を検討することがあります。本格的な免疫細胞療法のやり方ではありませんが、合間治療によって殺細胞剤の切れ味がよくなる、副作用が緩和される、薬剤耐性の出現が遅れる……といった効果が期待されます。進行がん治療では薬剤耐性対策もあらかじめ考慮しておくと心強いのではないかと思われます。