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2021-10-04

抗体薬物複合体「エンハーツ」がHER2陽性の小細胞肺がんに有望


HER2陽性の非小細胞肺がんは、患者が少ないため、HER2を標的とする治療が保険適用になっておらず、抗がん剤の効果も限定的でした。

がん細胞を狙って、抗がん剤を作用させる

抗体薬物複合体は、がん細胞に特異的な蛋白質を標的として作用する抗体医薬品に低分子医薬品である抗がん剤を結合させ、双方の長所を活かした新薬です。従来の抗がん剤は、がん細胞を直接傷害しますが、分裂中であれば正常な細胞にも影響があり、副作用を招きます。抗体医薬品はがん細胞の増殖に関わっている蛋白質を阻害し、がん細胞を直接減少させることはしませんが、正常細胞に与える影響は、比較的軽微です。このふたつを結合させることで、抗がん剤をがん細胞に直接送り届けて、正常な細胞を出来るだけ傷害することなく、がん細胞を攻撃出来るのです。

HER2陽性の非小細胞肺がんの標準治療になる可能性

既にHER2を標的とするトラスツズマブとデルクステカンを利用したエンハーツがHER2陽性の乳がんや胃がんに保険適用になっていますが、欧州で行われた第2相の治験では、既治療のHER2陽性の非小細胞肺がんに対して優位な結果を得られています。そもそも非小細胞肺がんにおいてはHER2が発現する頻度は少なく、これを標的とするトラスツズマブ単独での治療などは保険適用になっておらず、その他の抗がん剤などは効果が限定的でした。この治験結果は、HER2陽性の非小細胞肺がんに対して新たな標準治療が確立される可能性を示唆しています。

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