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2021-09-01

オーダーメイドでがんを叩くネオアンチゲンワクチンとは

標準治療では進行がんを完治させることが困難だと周知されるようになり、がん治療の個別化と免疫重視の治療の開発が進んでいます。そのひとつが、患者ひとりひとりに応じてがん細胞に発現しているペプチドを特定し、ワクチンとして投与し、免疫を刺激するネオアンチゲンワクチンです。今回は免疫細胞培養技術などの研究と臨床現場の両面の知識を併せ持つ、医師・医学博士である土方康基先生にお話を伺いました。


がん細胞にのみ存在するペプチド
細胞が分裂する際に、遺伝子が正常にコピーされないエラーの積み重ねで、がん細胞が発生します。これによって作られるがん細胞特有のペプチド(複数のアミノ酸が結合した状態)をネオアンチゲンといい、がん治療での活用が期待されています。
がん治療で重要になるのは、正常細胞とがん細胞を見分け、がん細胞のみを攻撃することです。今までの「がんワクチン」に使用されてきた、免疫細胞が認識するがん細胞の目印となる抗原は、がん細胞だけに発現するわけではありません。正常細胞にも僅かながら発現することが分かっています。そのため、従来の「がんワクチン」では、免疫細胞が正常細胞とがん細胞を区別することが出来ず、結果、がん細胞への攻撃力が弱まってしまうケースもありました。
その点、ネオアンチゲンは正常細胞には発現せず、がん細胞だけに発現することから、がん細胞だけを狙い撃ちするために最適な目印になるといわれています。膨大ながん患者の遺伝子情報のストックの中からがん細胞だけに認められる遺伝子変異のデータを蓄積し、スーパーコンピュータやAIを駆使して解析することで、異なるがん種やがん患者に共通するネオアンチゲンを特定する研究も進められています。「がんを治せる病気にする」可能性を大いに秘めている治療研究のひとつが、ネオアンチゲンの研究であるといえるでしょう。

ネオアンチゲンを利用した療法
現在、ネオアンチゲンを使用した療法には、大きく分けてネオアンチゲンペプチドワクチン療法とネオアンチゲン樹状細胞ワクチン療法のふたつがあります。
どちらの治療にも共通して、生検や手術によって取り出されたがん組織が必要です。がん細胞の遺伝子異常を次世代シークエンサーという精密機器を用いて解析し、患者固有のネオアンチゲンを特定します。ネオアンチゲンはひとつだけではなく複数あり、患者によってそれぞれ違うのです。万が一、手術をする病院から組織の提供を得られない、組織を取り出す手術が出来ない場合には、リキッドバイオプシーという血液中のDNAなどの精密検査によりがん組織の情報を得ることも可能です。
遺伝子解析の結果を踏まえ、治療に使うネオアンチゲンの選定を行い、ペプチド、もしくは樹状細胞を使用して、体内に入れます。

 

◇ワクチンの原材料の違い

ネオアンチゲンペプチドワクチン ネオアンチゲン樹状細胞ワクチン
ペプチド(複数のアミノ酸を人工的に結合させたもの)+免疫賦活剤 ペプチド+樹状細胞(患者の免疫細胞を使用)

 

◇ネオアンチゲンペプチドワクチン療法の仕組み
がんの抗原となるネオアンチゲンをペプチドで合成し、免疫賦活剤と混合したワクチンを直接体内に注射することで、体内の樹状細胞や免疫細胞にその目印を認識させ、がん細胞を攻撃します。これをきっかけに、患者の免疫機構が同じ抗原を持つがん細胞を一斉に攻撃するので、がん細胞も死滅していくという仕組みです。

◇ネオアンチゲンペプチドワクチン療法の特徴
ネオアンチゲンペプチドワクチン療法では人工的に合成された抗原ペプチドと免疫賦活剤を使用するため、品質が安定するという利点があります。費用が安価で済むため、他の療法と合わせた複合的な免疫療法を行うことが可能になり、治療の選択肢が広がります。

◇ネオアンチゲン樹状細胞ワクチンの仕組み
患者自身の血液から樹状細胞の元になる単球を取り出して培養し、樹状細胞に分化させ、抗原ペプチドを取り込ませます。この樹状細胞をワクチンとして注射し体内に戻します。樹状細胞は免疫細胞の教育係の役目をする細胞で、体内のリンパ球に抗原を認識させ、がん細胞への攻撃を誘導します。

◇ネオアンチゲン樹状細胞ワクチンの特徴
体外で樹状細胞に直接抗原ペプチドを取り込ませるため、効率がいいと考えられています。しかし、患者自身の免疫力やがんの進行状況によってワクチンとなる樹状細胞の質(生命力、免疫力)にばらつきがあり、培養も技術者の技量によって差があるなど品質の安定には課題があります。また、樹状細胞の分化が上手くいかず、未熟な状態となってしまった樹状細胞は、逆に免疫を抑制してしまうという側面もあります。

どちらの治療にも一長一短がありますが、どこまでがん患者の免疫を回復させられるのかということが課題になってくることでしょう。

がんの治療は「手術だけ」「抗がん剤だけ」「ひとつの免疫療法だけ」ではなく、複合的に行うことが重要です。そのためには標準治療に加えて、分子標的薬などの新薬、自由診療で行われている最先端の医療、栄養や生活指導も含め、複合的な意見や知識が得られる医療機関でのセカンドオピニオンが必要なのではないでしょうか。

 

取材協力/NEOクリニック東京
〒108-0071 東京都港区白金台3-14-4 LBビルディング6階
電話 03-6450-4796
定休日 火曜・土曜・祝日

 

 

 

 

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