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2021-07-28

断片的な報道が標準治療への誤解を招く


がん治療の選択は生死を左右します。断片を切り取って、誤解を招くような報道は慎むべきです。

ガイドラインに疑問を感じる患者は増えている

先日、がん闘病中のジャーナリストが「病院任せのがん治療から逃げ出し、手術を回避。だから、生き延びた」という内容の記事を雑誌に執筆していました。進行した状態で見つかった食道がんに対して、手術を勧めた主治医の診断に納得が行かず、別の病院でセカンドオピニオンを聞いた結果、化学放射線療法を受けた結果、「生き延びた」という内容です。確かに標準治療の部位別、ステージ別に確立されたガイドラインに、疑問を感じる患者は少なくないと思います。実際、食道がんの手術は胸部を大きく切開するため、術後の後遺症など様々な問題があり、5年生存率のあまり変わらない化学放射線療法を推奨する医師が増えています。

手術は一番確実にがんを取れる

とはいえ、手術は一番確実にがんを取れる(がん細胞の数を減らせる)治療です。個々の患者には症状だけでなく年齢や体力、場合によってはその後の暮らし方などの事情も考慮した結果、主治医は手術を勧めたのでしょう。それに対して手術を回避したから生き延びたという表現をしたのでは、まるで手術を含めた標準治療が、生存率を考えていない選択のように誤解されかねません。そもそもこの患者は診断からまだ2年半弱です。標準治療では治療が終了してから5年再発しなければ寛解ということを考えても、まだ慎重に経過を観察しなければいけない段階です。

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