toggle
2021-06-30

がん患者さんは、ワクチン接種の前には必ず主治医に相談を


安全なのか、効果があるのか……接種が開始された新型コロナウイルスワクチンは、健常者以上に慢性疾患を抱えた方にとっては、大きな関心事でしょう。特に免疫の病気といえるがんと闘っている患者さんにとってはなおさらのこと。ワクチン接種に関する不安や疑問について多くのがん患者さんの診療を行ってきた新横浜かとうクリニックの加藤洋一医師に取材しました。

ワクチンはなるべく早めに接種したほうがいい

 がん患者さんがワクチン接種を受ける際には、まず主治医にワクチン接種をしてもいいかどうかを相談したほうがいいと思います。がん患者さんや主治医にとって一番悩ましいのは、大勢の方が集まる場に行くことによる新型コロナウイルスの感染リスクだと思います。また、副反応については様々な報道があり、不安に感じている方が多いかと思いますが、医師としての私の見解は、接種出来る機会があるのであれば、積極的に、それもなるべく早めに接種した方がいいということです。抗がん剤の治療をしている方は、免疫が低下しており、感染した場合には高確率で重症化し死亡リスクがあるからです。

ワクチン接種の前後含めて、6週間は抗がん剤を休むべき

 抗がん剤を使用し、免疫力が低くなっている状態で、ワクチンを打っても、抗体がつかない心配もあるでしょう。その点については主治医と相談する必要があります。例えば、ワクチン接種の1週間くらい前から抗がん剤を休んで、免疫力が戻った頃に、1回目のワクチン接種を受け、3週間経ってから、2回目のワクチン接種。抗体を得るまでには、2週間くらい時間がかかるので、2度目のワクチン接種後も2週間くらいは抗がん剤をお休みしないといけません。合計すると約6週間以上、要は1か月半くらい抗がん剤をお休みする必要があります。

白血球の数が不足していないことが重要

 あくまで目安ですが抗がん剤をはじめたばかりだと、白血球の数は1週間ほどで回復するのですが、半年、1年と抗がん剤を続けている方は、回復するまでに2週間くらいはかかります。白血球の数を正常化させて、しっかりと数が戻ったタイミングで、ワクチンを接種するのが理想です。白血球の数は、血液検査の結果に書かれている「リンパ球数(LYMPH)」という数字を見るとわかります。リンパ球数は、血液1㎕当たり1500個以上ないと、新型コロナウイルスに感染した際に重症化し易いといえるでしょう。加えてがんに対する免疫力も低下しているので、リンパ球が1500個を下回っていれば、免疫細胞を増やしてあげる治療を受けることも検討してみてはいかがでしょうか。リンパ球数が少ないと、免疫獲得が弱く、発症を予防する効果は小さいのですが、重症化を予防する効果は期待出来ます。

予診の際にはがん患者であることを伝える

 ワクチン接種をする前には、予診票に必要事項を記入をします。そこにはきちんとがん治療中であること、もしくはがんを患っていたことなどを記入すること。質問された際にスムーズに答えられるように、手術をしたなら手術をした年月日と病院名、担当医の名前、診断名などをメモして持参するといいでしょう。

進行がんといわれた方はがんの治療を優先させる

 進行がんと診断された方であれば、一旦は手術などの治療を優先させ、術後の傷や体調が落ち着いてからの段階で、ワクチンの接種を考えてもいいのではないでしょうか。そして、しっかりと抗体を作ってから、術後の抗がん剤治療を受けるという選択肢もあります。全ての方が新型コロナウイルスのワクチンをいつでも接種出来るという状況ではないので、順番が来るのを待っている間に、がんの状況が変化してしまう可能性もあるわけです。年代やがんのステージや種類など、患者さんごとに状況が違いますので、進行がんの場合は特に主治医としっかり相談することが大切です。

新型コロナウイルスに感染するとがん治療が中断

 本人、または家族に37・5℃以上の発熱があった場合は、すぐに都道府県の発熱者相談センターに連絡し、同居者全員がPCR検査を受け、陽性者を早期発見し、隔離とともに医師による経過観察を受けましょう。がん患者さんは、新型コロナウイルスに感染すると、重症化する可能性が高いのですが、多くの場合、主治医が感染症の専門家ではないため、発見が遅れることが懸念されます。常に自分の身体の変化に注意し無理をしないようにしてください。新型コロナウイルスに感染した場合、治るまでの間、がん治療を中断せざるを得ないので、がんが進行したり転移したりすることが危惧されます。これまで以上に注意を払い、この夏を乗り越えてください。

自由診療

SKCがん免疫検査(要予約)
費用 30,000円(税別)
少量の血液検査のみ。
検査よりおよそ14日後に結果が出ます。

取材協力

新横浜かとうクリニック
加藤洋一 院長
日本大学医学部卒業。日本大学大学院医学研究科修了。医学博士号を取得。東京女子医大外科非常勤講師、白山通りクリニック院長を経て、平成20年、新横浜かとうクリニック院長になる。医療法人社団神樹会理事長。横浜市医師会代議員、神奈川県医師会代議員、聖マリアンナ医科大学放射線講師、横浜外科医会副会長。

〒222-0033 神奈川県横浜市港北区新横浜2丁目6−13 新横浜ステーションビル 8階
新横浜駅(JR横浜線、東海道新幹線、横浜市営地下鉄ブルーライン)徒歩5分程度
診療時間 10:00~18:00
休診日 木曜・日曜・祝日
※事前予約が必要です
TEL: 045-478-6180
URL: https://katoclinic.info/

Share on Facebook0Tweet about this on Twitter0
関連記事