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2020-03-03

スペシャルインタビュー「がん患者がウイルスに負けないために今すぐ出来ること」

スペシャルインタビュー
新横浜かとうクリニック院長 加藤洋一

2020年1月31日、WHO(世界保健機関)が新型コロナウイルス「COVID-19」の流行を受け、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」と発表しました。日本国内でも感染拡大が報じられる中、中国で死亡した方の多くは、糖尿病や心臓病などの既往歴のある高齢者が多いとの情報に、不安を覚えるがん患者は少なくないかと思います。がん患者が免疫を高め、感染症を予防するにはどのようにすればよいのか、先端医療から生活指導まで幅広くがん患者のケアをしている新横浜かとうクリニック院長の加藤洋一医師にお話を伺いました。

新型コロナウイルス、インフルエンザ・・・
「がん患者がウイルスに負けないために今すぐ出来ること」

新型コロナウイルスによる肺炎がアジア圏を中心に拡大しています。発症すると生死に関わるくらい悪化するため、世界中に不安をもたらしていますが、発生した中国での状況を政府が適切に開示し、迅速に対処しなかったことで、今後、状況がどんどん悪化していくことが考えられます。

国内では発症している方の数は限られていますが、多くの方が感染している地域からの渡航者をすぐには制限しなかったことで、把握出来ていない感染者は既に相当な数になっているでしょう。

感染症を予防するには、多くの方が出入りする場所には近づかないこと、またどうしても行かなければならない時には、マスクなどで自衛策をとること、こまめに手を洗うなど、衛生面に注意することが求められます。

また、少しでもおかしいなと思ったら、早めに医師の診断を受けて、適切な対処をとることです。新型コロナウイルスによる肺炎は急激に悪化しますが、病気は対処が遅れることで手遅れになることはよくあります。

自分の治療を迅速に行うことは、自分から誰かに感染することを防ぐことに繋がります。マスク、手洗い、早めの治療……パンデミックを防ぐのは、こうしたひとりひとりの日常の心がけに懸かっています。

幸い我が国はひとりひとりが衛生に対する意識が高く、国民皆保険という素晴らしい制度によって誰もが質の高い医療サービスを受けることが出来ます。

がん患者の皆さんは特に感染症に注意しなければならない季節です。暦の上では春になっていますが、まだ気温は低く、空気は乾燥しています。ウイルスの活動は活発になり、風邪やインフルエンザにかかりやすい時期です。もちろん、さらに症状の重い新型コロナウイルスへの注意は必須です。

がん患者さんが亡くなるうち、多くのきっかけになるのが感染症です。

そもそもがんは、免疫が十分に機能せず、遺伝子が正常にコピーされなかった細胞を排除しきれず、大きな腫瘍になってしまった結果といえます。また、がん細胞は免疫を抑制します。さらに、抗がん剤などの治療は免疫細胞にダメージを与え、体力も低下させます。

がん患者さんは健常者よりも免疫が低下しており、感染症にはかかり易いということを意識しておいてください。従って、日頃から免疫を上げる努力が必要です。

自律神経は体の様々な機能を制御しており、免疫も例外ではありません。昼間は活動し、夜は休むという正しい生活のリズムを守ることで、免疫も正しく機能します。

体温は36.5℃を下回ると、徐々に免疫が低下します。シャワーで済ませるよりは湯船に浸かって、体を芯から温めてください。

食生活ではショウガなど温まる食材を積極的に取り入れるといいでしょう。昨今、糖質制限が流行しており、がん患者さんの中でも実行している方が少なくないようです。糖質はがん細胞のエネルギー源であり、それを兵糧攻めにしようという考えです。しかし、糖質が不足すると、確実に体温が下がります。糖質は素早くエネルギーに変わり、体を温めてくれます。何事もバランスが大事であり、過度な糖質制限はがん患者さんにはお勧め出来ません。

そして、寒い時期は億劫かもしれませんが、がん患者さんも積極的に体を動かしてください。体を動かせば、体温は上がります。また、筋肉が多ければ、それだけ熱を生み出してくれますが、運動をしていないと筋肉はどんどん落ちていきます。

最後に最近のインフルエンザはあまり発熱しない場合があります。また、新型コロナウイルスは発症しなくても感染源になるといわれています。

そして、がん患者さんのように免疫や体力が低下している場合、発症しても発熱があまりないことさえあります。発熱は、免疫細胞が感染したウイルスや細菌と闘っている結果です。免疫が低下していると、感染・発症の兆候さえ見逃がしかねないのです。

がん患者さん、そして家族にがん患者のいる方は、そのあたりも含めてこの季節を乗り切っていただきたいと思います。

医療法人社団神樹会
新横浜かとうクリニック

院長 加藤洋一
平成20年、新横浜かとうクリニック院長。平成22年、医療法人社団神樹会理事長。平成23年、横浜市港北区港北医療センター理事・横浜市医師会代議員・神奈川県医師会代議員・横浜市外科医会学術担当理事・聖マリアンナ医科大学放射線講師。平成27年、一般社団法人横浜市港北区医師会副会長・港北医療センター副センター長。平成29年、横浜外科医会副会長。

新横浜かとうクリニック
〒 222-0033 横浜市港北区新横浜2-6-13新横浜ステーションビル8階
TEL 045-478-6180
診療時間 10:00~18:00 休診日 木曜・日曜・祝祭日

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