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2019-12-28

2003年にはがんの転移を防げると、1982年に科学技術庁が予測

2019年の今なお、がんという病気は克服されていませんが、大きな流れは少しずつ変わっています。

がんは再発・転移するから厄介
1982年、当時の科学技術庁(現在の文部科学省)は、1982年にはがんの転移を防ぐ有効な手段が開発されると予測していました。我が国では1971年から5年ごとに以後30年の科学技術の発展を予測する試み「科学技術予測調査」が行われており、その際に発表された内容です。がんは、再発・転移を繰り返すから厄介な病気だといえます。手術や放射線で目に見えるがんを消しても、細胞の単位で散らばったがんは、そこからまた増えてくるのです。全身療法として抗がん剤を使用しても、全てのがん細胞は排除出来ません。

免疫と遺伝子からがん征圧にアプローチ
1982年のこの予測は、残念ながら外れており、2019年現在でもがんの死亡率はなかなか下がりません。ただ、ここ数年、がん治療の流れが根本的に変わりつつあるのは事実です。標準治療は基本的にがんを対象として、手術で切り、放射線で焼き、抗がん剤で殺していきます。それではなかなかがんで亡くなる方が減らない中、がんの根本的な発生原因でありう免疫の低下と遺伝子の変異に焦点が当てられるようになったのです。

対症療法である標準治療から根本治療へ
2003年には残念ながら転移を防ぐ手段は開発されませんでしたが、ヒトゲノムが開発され、医療への活用が進んでいます。がんは遺伝子が変異し、異常な細胞が生まれ、それが増えていった結果ですから、それを明らかにし、それに応じて治療を選択しようというのががんゲノム医療です。今年は一部の患者が対象ではありますが、がん遺伝子パネル検査が保険適用になりました。

また、がんは免疫が機能せず、異常な細胞が生き延びて増えた結果ともいえます。がん細胞を排除出来るまでに免疫を回復させることが、がん克服の近道であり、欧米では既に免疫を重視した治療が主流になっています。標準治療ではいまだに免疫を低下させる抗がん剤が、広く使われていますが、本庶佑博士が免疫の研究でノーベル賞に輝き、その研究から生まれた免疫チェックポイント阻害剤「オプジーボ」の誕生は、がん治療の要が免疫であることを、世に知らしめたのではないでしょうか。

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