toggle
2019-11-19

CAR-Tの限界とは?

いろいろと話題になったCAR-Tですが、今年、保険適用になった血液のがんだけではなく、固形がんへの使用についても研究が続けられています。

これからのがん治療の鍵は免疫
免疫細胞の一種であるT細胞の遺伝子を改変し、がん細胞への攻撃性を高めたCAR-Tは、キムリアが血液のがんに対して保険適用となりました。がんは免疫が十分に機能せず、がん細胞を排除しきれず増やしてしまった結果といえます。従来の標準治療だけではなかなか進行がんが克服出来ない中、がん治療はいかに免疫を回復させるかに、舵を切りつつあり、CAR-Tも固形がんに対する研究が様々な医療機関や大学などで行われています。

何をがん細胞の目印にするか
CAR-Tのポイントは、何をがん細胞の目印とするかです。キムリアの場合、血中にあるがん化したB細胞表面のCD20という分子を標的として認識させます。これに対して固形がんは塊であり、ひとつひとつのがん細胞の性質も複雑です。血液のがんのように構造がシンプルではないのです。そして、一番の問題は、がん細胞の目印が見つかれば、換言するとがん細胞を正常細胞を区別して特定出来れば、面倒なCAR-Tなどを作らなくても、それを目印に作用する分子標的薬を作ればいいでしょう。がん細胞は体外からの侵入物ではなく、体内で作られたものなので、がん細胞に比較的多く存在する分子はあっても、がん細胞にのみ存在する分子などは、まだ見つかっていないのです。

がん細胞を識別出来るのはNK細胞のみ
結局、人為的にがん細胞を選別しようとするには限界があります。因みにどんながん細胞でも的確に識別し、速やかに除外出来るのは、免疫御細胞の中でも活性の高いNK細胞だけです。がん細胞は生き延びるために様々な手段で免疫細胞を欺き邪魔をします。がん細胞が増えるにつれて、この抑制は強くなり、がん患者の免疫はNK細胞を含めて眠らされている状態なのです。がん征圧に免疫からアプローチする王道は、NK細胞の活性をいかに高めるかに懸かっているといえます。

Share on Facebook0Tweet about this on Twitter0
関連記事