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2019-10-21

「免疫療法」は何を意味するのか?

オプジーボやキイトルーダだけが免疫療法ではありません。

三大療法から免疫療法へ
がん治療の鍵は、免疫をいかに機能させるかであることが周知されるようになりました。保険診療で行われる標準治療は手術、放射線、抗がん剤の三大療法が中心ですが、免疫を低下させるという欠点があります。そして、標準治療だけではなかなかがんで亡くなる方が減らない中、様々な免疫を機能させる治療が開発されています。がんと免疫の関係について多くの方が知るきっかけになったのは、免疫チェックポイント「PD-1」の研究で本庶佑博士がノーベル賞を受賞したことでしょう。そして、その研究は免疫チェックポイント阻害剤「オプジーボ」という新薬を生み出しました。

オプジーボは免疫療法の本筋ではない
このオプジーボをはじめとする免疫チェックポイント阻害剤こそが免疫療法だという方がいます。確かにオプジーボや同じく免疫チェックポイント阻害剤のキイトルーダ、ヤーボイなどは保険適用になっています。しかし、これらはいずれも免疫療法の本筋とはいえません。なぜなら、全てT細胞の働きを回復させるに過ぎないからです。免疫細胞には幾つかの種類があります。T細胞は数の面では多いのですが、膨大な数のタイプがあり、たとえ目の前にがん細胞があっても攻撃するかどうかは万分の1以下の確率だといわれます。活性が高ければ、どんながん細胞でも排除出来るのはNK細胞のみで、これこそががん免疫の主役なのです。

欧米では既に免疫療法中心に
オプジーボの登場で我が国のがん治療が免疫重視の方向に劇的に変わるような報道がありました。しかし、免疫療法の本筋とはいえません。むしろ欧米では免疫を低下させる抗がん剤はあまり使われなくなり、がん細胞に特異的に見られる蛋白質を目印に作用し、がん細胞の増殖を抑える分子標的薬が主流になっていますが、これは既に世界のがん治療が免疫重視にシフトしていることを意味しています。分子標的薬はがん細胞の増殖を抑えながら、自分の免疫でがんを退治するという設計になっており、多くは免疫を上げるADCC活性を持っています。

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