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2019-02-06

結局は抗体次第の光免疫療法

新たながん治療が登場すると、がん征圧は間近のように報道しがちです。

話題の種に事欠かない光免疫療法
近年、新たながん治療として話題に挙がるひとつが光免疫療法です。日本人医師が開発したこと、がん細胞を狙い撃ち出来ること、昨今の新たながん治療とは異なり、誰でも受けられそうな費用になりそうなこと、大手IT企業の楽天が出資していることなど、話題となる材料は幾つもあります。とはいえ、一番注目されるのは、がん細胞を狙い撃ちに出来るということではないでしょうか。

がんを狙い撃つという最大のテーマ
がん治療において最大のテーマは、全身に散らばったがん細胞を、どのようにして叩くかに尽きます。目に見える腫瘍を手術や放射線で取り去っても、がんはひとつの細胞から再発や転移を起こします。光免疫療法ではがん細胞に集まる抗体に、光に反応する色素を結合させて投与し、光(近赤外線)を照射します。光に反応して、がん細胞に取り込まれた色素は発熱し、がん細胞を破壊します。

がん細胞を狙い撃つのは、既存の技術頼み
この際に使われる抗体は、既存の分子標的薬です。近年のがんの新薬は、がん細胞に特異的に見られる蛋白質を目印に作用する分子標的薬が主流です。しかし、がん細胞だけに存在し、正常細胞には存在しないがんの標的物質は、いまだに発見されていません。従って、光免疫療法ががん細胞だけを狙い撃ちにするという表現は正確とはいえないのです。影響を受ける正常細胞もあれば、撃ち漏らしてしまうがん細胞もあります。頭頚部のがんを対象にした治験では、腫瘍が縮小したり消失したり素晴らしい効果が確認されているようですが、がんという病気を細胞の単位で考えれば、完全な治療とはいい難いのが実情です。

メディアに手のひらを返された「夢の新薬」
とはいえ、がん治療は有効な手段を組み合わせての総力戦です。頭頚部は後遺症を考えれば、手術や放射線による治療が行いにくいがんといえます。そこに効率よく腫瘍を縮小、消失させられる治療が登場したことは画期的といえます。また、がん細胞がどんどん破壊され、それまで抑制されていた免疫が目覚めるという効果も期待出来るようです。問題は、目新しい治療が出てくると、その長短を吟味せずに持て囃してしまう報道のあり方です。一時は「夢の新薬」と持て囃されたオプジーボは、重篤な副作用や高額な薬価の問題が露呈した途端、手のひらを返したような批判を浴びました。がんは生死に関わる病気です。だからこそ、報道には冷静さと正確さが求められます。

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