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2018-11-28

乳がん治療の流れを変えたハーセプチン

乳がん患者に使われる分子標的薬「ハーセプチン」について解説します。

主流は抗がん剤から分子標的薬へ
がんに対する化学療法は、抗がん剤(殺細胞剤)から分子標的薬に主流が移りつつあります。抗がん剤は、がん細胞が正常細胞よりも激しく分裂・増殖していることに着目し、分裂中の細胞のDNAを傷害します。しかし、分裂していないがん細胞は生き延びることに加え、分裂中の正常細胞は傷害するため、様々な副作用があります。そこでがん細胞に特異的に発現する蛋白質などを目印に作用して、増殖を抑える分子標的薬が開発されるようになりました。

増殖の速いがん細胞に発現することが多いHER2
ハーセプチンは乳がんと胃がんに保険適応となっている分子標的薬です。増殖が速く転移しやすいがん細胞には、HER2という蛋白質が発現していることが多く、ハーセプチンはこれを標的としています。抗がん剤の効果が出にくい進行性のがんに対して効果が確認され、特に乳がんにおいては治療の流れを変えたといっても過言ではありません。HER2は正常細胞にはあまり見られず、副作用は従来の抗がん剤に比べれば、極めて軽微といえます。また、ハーセプチンは、がん免疫の主役といえるNK細胞を刺激するADCC活性を持っており、がんが大きくなるのを食い止めつつ、自らの免疫でがんを退治する薬といえます。

海外では様々ながんに使われるハーセプチン
乳がんに限らず進行がんの場合、HER2を発現している場合が多く、海外では様々ながんに使われています。国内では2001年に乳がんに対して、2011年に胃がんに対して保険適応になっているだけですが、保険適応外で処方されることは少なくありません。国はがんゲノム医療を推進し、遠からず遺伝子の変異という観点から治療を選択することが一般的になるでしょう。ハーセプチンが一部のがんにしか使えないというドラッグ・ラグの解消が待たれます。
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