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2018-08-27

CAR-T報道でも多く見られる間違った認識

新しいがん治療が登場すると、「がん細胞を狙い撃ち」「正常細胞は傷つけない」などという報道があります。話題のCAR-Tでも同様な表現が目につきます。

がん細胞を見つけやすいように、遺伝子を改変
大塚製薬はタカラバイオとの提携でCAR-T事業に参入していますが、大阪大学とも組むことが発表されました。CAR-Tは米国ではキムリアが承認され、我が国でも承認申請が出されています。免疫細胞の遺伝子を改変するという手法が話題になりましたが、その際に殆どのメディアは、CAR-Tはがん細胞を認識しやすいように、遺伝子を改変されており、正常細胞は傷つけることなく、がん細胞を攻撃すると伝えています。

キムリアは正常なB細胞まえ攻撃する
結論からいうとこの認識は誤りです。例えばキムリアは血液のがんの治療薬ですが、免疫細胞(T細胞)の遺伝子を改変し、CD19という蛋白質を認識しやすくします。T細胞はがん化したB細胞表面に特異的に発現したCD19を目印に攻撃を仕掛けるのですが、CD19は正常なB細胞にも存在しています。決してがん細胞だけを見分けて攻撃しているわけではないのです。当然、正常なB細胞もダメージを受け、副作用を招きます。

がん細胞を異物として認識することは困難
がん細胞だけをいかに排除するかは、がん治療の最大の課題です。そのためにはがん細胞を化学的に識別することが必要なのですが、がん細胞が体内で発生したものである以上、異物として区別することが困難なのです。がん細胞を狙い撃ちするというのは、新しいがん治療が登場した際の常套句ですが、実際にはたくさんの流れ弾が飛んでくるわけです。人目を引きたいだけのお粗末な報道には惑わされたくないものです

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