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2017-12-11

免疫療法への恣意的な報道

がん拠点病院で保険適用外の免疫療法が行われていたという報道がありましたが、その論調とソースとなった厚生労働大臣の会見内容を比較すると、少なからず違和感がありました。

がん拠点病院は標準治療を行うところ
434のがん拠点病院のうち、84病院で保険適用外の免疫療法が行われていたという報道がありました。がん拠点病院は全国どこでも均質ながん治療を提供することが目的であり、基本は標準治療を行います。それ以外の新しい治療は臨床研究の目的で行うことになっているのですが、5病院が患者の要望に応じる形で、自由診療として行っていました。厚生労働省はこれを問題視し、方針に沿ってがん拠点病院としての指定要件を見直すとのことですが、それ自体はもっともなことです。

免疫療法を否定するような報道のニュアンス
しかし、それを報じた論調には、いささか違和感がありました。12月4日の読売新聞では「有効性や安全性が確立していない保険適用外のがん免疫療法について、厚生労働省は、国指定のがん診療連携拠点病院では臨床研究としての実施を原則とする方針を決めた。」としています。素直に読むと、怪しい免疫療法を行っているがん拠点病院があったというように感じてしまうのではないでしょうか。厚生労働省が免疫療法を否定しているようにもとれます。

厚生労働大臣は免疫療法を否定していない
では、この報道のソースとなった10月3日の厚生労働大臣の会見ではどのように述べていたか。「一部のがん診療連携拠点病院において、有効性などが確認されていないがんの免疫療法がされているとの報道があったわけですが、一般論としてがんの免疫療法はがん患者自身の免疫力を高めることで、がん細胞を排除する新しい治療法ということであります。しかし中には、未だ十分に科学的根拠が蓄積されていないものもあります。がん診療連携拠点病院では、臨床研究・治験の枠組みで免疫療法を行う、また、標準治療を行った後に、自由診療として免疫療法を行うことは否定されていません。」という内容であり免疫療法を否定しているわけではないのです。

悪貨が良貨を駆逐しかねない免疫細胞療法
昨今、新聞やTVが政治家などのコメントを都合よく切り張りして、恣意的に世論を誘導しているのではないかと批判されています。今回の報道についてもどこかそのような思惑を感じずにはいられません。確かに「免疫」と名前のつくがん治療に怪しげな治療がないわけではありません。特に治療費が高額な免疫細胞療法は何かと批判の対象になっています。しかし、免疫細胞療法自体はNIH(米国国立衛生研究所)が効果を確認したLAK療法に端を発する治療であり、真っ当に実施しているANK療法などは科学的根拠も豊富な実績もある治療です。こうした恣意的な報道で悪貨が良貨を駆逐し、助かる患者まで助からないということが起きないことを願うばかりです。

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