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2017-11-15

T細胞を使うCART‐Tの限界

 

CART-Tが認証され、遺伝子を操作する治療であることや、費用が5000万円以上と高額なことが話題になっています。

T細胞の遺伝子を改変し、攻撃力を高める
米国で承認されたCART-T(キメラ受容体T細胞療法)は、免疫細胞の遺伝子を改変し、がん細胞への攻撃性を高めるという仕組みと、その費用が約5000万円と高額なことで話題になっています。CART-Tは、免疫細胞のうち、T細胞の遺伝子に改変を行います。体外で免疫細胞を強化して戻すわけですから、免疫細胞療法の一種といえるでしょう。これからのがん治療は免疫をいかに回復させるか、強化するかにかかっていますが、まさにその考え方に沿った治療といえます。がん細胞を狙い撃つことが、新薬開発のテーマ
一方、がんの分野での新薬開発のテーマは抗体です。がんという病気が厄介なのは、細胞の単位で存在する病気であり、それを完全に排除しない限り、再発や転移のリスクは解消出来ないことです。従来の抗がん剤では正常な細胞にまで影響があり、またがん細胞を一掃出来るわけでもありませんでした。そこで、がん細胞だけを狙い撃つために、がん細胞に特有の物質を見つけ出し、その抗原に対応する抗体を開発しようというわけです。この考え方で作られているのが、欧米では既に主流になっている分子標的薬で、がん細胞に特有の物質を目印に作用し、分裂・増殖を食い止めます。がんの勢いを止めておいて、免疫で治そうという考え方です。

がん細胞だけに存在する物質は見つかっていない
しかし、がん細胞は自分の体で作られたものであり、異物といっても細菌やウイルスとは性格が異なります。完全に異物として認識することは不可能で、がん細胞に特異的に存在する物質といっても、正常細胞にも存在しないわけではないのです。がん細胞にのみ存在し、正常細胞には存在する物質を発見出来れば、がんという病気は征圧出来るといっても過言ではありませんが、それはまだ実現出来ていません。

T細胞の限界とNK細胞の最強の攻撃力
ところが、科学の目では不可能ながん細胞の識別が出来るのがNK細胞です。CART-Tは今回、血液のがんに対して承認されましたが、固形がんに対してはまだ多くの課題が残されています。CART-Tで用いるT細胞は、数の上では多いのですが、幾つもの種類があり、自分のタイプに合ったがん細胞しか攻撃しないのです。その点、NK細胞は活性が高ければ、がん細胞を見逃すことなく排除します。免疫細胞の真打はNK細胞。次世代のがん征圧の鍵はこのNK細胞をいかに機能させるかでしょう。
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