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2017-05-26

疲弊した免疫細胞を若返らせる技術が開発される

がん治療の鍵が免疫であることは、徐々に周知されています。免疫細胞の量と質次第でがんは征圧出来るといっても過言ではありません。慶應大学などのグループは免疫細胞のひとつであるT細胞を若返らせ、疲弊から回復させる技術を開発しました。

がん患者の免疫細胞は疲弊している
慶應大学医学部の吉村昭彦教授らのグループは、免疫細胞のひとつであるT細胞を、がん細胞を攻撃して疲弊した状態から回復させる技術を開発しました。患者自身の免疫細胞を採取した後、体外で培養して、点滴によって戻す免疫細胞療法においては、免疫細胞の活性を維持することが重要です。しかし、患者のT細胞は何度も刺激を受けることで疲弊しており、培養して体内に戻しても、思うようにがん細胞を攻撃しません。

若返ったT細胞を体内に戻して、がんが消失
研究グループはT細胞を若返らせる方法を探した結果、活性を上げたT細胞と0P9-DL1というストローマ細胞(幹細胞や前駆細胞の生存を維持する環境を提供する細胞)を一緒に培養したところ、若返った状態になりました。マウスを使った実験では、こうして培養したT細胞は、がんの増大を防ぐことが確認出来ました。中にはがんが完全に消えたマウスもいました。

NK細胞も若返らせることが出来れば有望
免疫細胞のうち、数の上で圧倒的に多いのはT細胞ですが、がん細胞を攻撃するのは一部です。もっといえば、自分のタイプに合ったがん細胞でなければ、目の前にあっても攻撃しません。その確率は100万分の1とさえいわれます。がん免疫の主役はどんながん細胞でも素早く発見して排除するNK細胞ですが、T細胞に比べると、培養や活性の維持がはるかに困難です。NK細胞もがん細胞を攻撃する上では、活性が重要です。T細胞を若返らせる技術が、NK細胞にも応用出来ることを期待しましょう。

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