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2017-03-10

温度差でがん細胞だけを狙い撃つ新技術

がんだけを叩くために、抗がん剤などの薬を狙って送り込むDDS(ドラッグ・デリバリー・システム)の新たな技術として、正常組織と腫瘍組織の温度差を利用する技術を、九州大学などの研究グループが発表しました。

DDSは腫瘍の血管の大きな隙間を利用
抗がん剤などの副作用を防ぐには、がん細胞だけに作用する薬を使うか、そこにだけ薬を送り込むしかありません。後者の技術としてDDSが研究されていますが、腫瘍組織の血管は正常組織の血管よりも大きな隙間があることを利用しています。正常組織の血管の隙間よりも大きく、腫瘍組織の血管の隙間よりも小さいサイズになるよう、ナノ微粒子に薬剤を内包させて投与します。

腫瘍組織は正常組織よりも温度が高い
今回、九州大学などの研究グループが発表したのは、正常組織と腫瘍組織の温度差を利用する方法です。がん細胞は正常細胞よりも盛んに分裂・増殖を繰り返すため、温度が高くなる性質があります。そこでヒトの体温よりも少し高い温度に反応して、分子が集合しサイズが大きくなるナノ微粒子を開発しました。これに抗がん剤などの薬を内包して投与することで、腫瘍組織を狙って送り込み、さらにはサイズが大きくなって集積しやすくなるというわけです。

P-THPはブドウ糖と似ている抗がん剤を利用
副作用がない抗がん剤ということで注目されたP-THPは、ピラルビシンという抗癌剤を利用していました。がん細胞は盛んな分裂・増殖のためにブドウ糖を積極的に摂取するのですが、ピラルビシンにはブドウ糖に似た分子が繋がっており、がん細胞が間違えて取り込んでしまうのです。がんだけを狙い撃ちに出来るかどうかは、がん克服の鍵といえます。今後も様々な手法が開発されていくのを注視したいと思います。

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