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2017-01-06

手術が難しい膵がん征圧の新たな武器「ナノナイフ」

見つかった時には既に進行しており、手術が難しい場合が多い膵がん。この厄介ながんを退治するための強力な武器が、高圧電流を使ったナノナイフです。

Pancreas
膵がんは発見された時には進行している
膵がんは、患部が幾つもの臓器に囲まれた深部にある上、初期にはこれといった自覚症状がないため、発見された時にはかなり進行している場合が大半です。ステージ4になると5年生存率は1%強。最も厄介ながんとして「がんの王様」などと呼ばれることがあります。昨年は元横綱・千代の富士として活躍した九重親方が、61歳という若さで膵がんで亡くなりました。一昨年、還暦を迎え、年齢を感じさせない土俵入りを披露していましたが、屈強を絵に描いたような人物でも、それから2年もしないうちに命を絶たれるほどの病気だということです。

ナノナイフは高圧電流でがん細胞だけを破壊
しかしながら、治療は日々進歩しています。その中で膵がん治療の新たな武器として注目されているのがナノナイフです。腫瘍を取り囲むように、数本の細い針を刺し、そこに3000ボルトの高圧電流を流すことで、がん細胞に100万分の1mmという小さな穴を開けて死滅させるという治療になります。4本の針を使えば、15分ほどで大きさ3cm程度の腫瘍を完全に消すことが可能です。ナノナイフは血管や膵液を流す膵管には影響を与えることなく、がん細胞のみを破壊します。局所に留まってはいるものの、周囲への浸潤などが進み、従来では手術が難しかったようながんに対しては有効な手段となりえます。

ナノナイフで手術出来なかった膵がん患者が手術可能に

患部が深部にあり、周囲への浸潤が多い膵がんには効果的な方法といえるでしょう。従来は手術が出来ないような場合でも、ナノナイフによって手術が出来る状態にしたり、手術は出来なくても腫瘍を小さくすることで、生存期間を延ばしたりすることが可能です。米国ルイビル大学が手術不可能な膵がんの患者にナノナイフ治療を行った結果、200人のうち、50人が上腸間膜動脈への浸潤を剥がすことが出来、手術可能になりました。また、手術が可能にならなかった患者においても生存期間が2倍になるなどの効果がありました。我が国ではまだ臨床研究の段階ですが、欧米では以前から実績があり、膵がんに限らず肝がんや前立腺がん、腎がん、乳がん、肺がんなどの治療にも使われています。
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