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2016-12-19

がん細胞を狙って薬を送り込む技術を、岡山大学が開発

がん細胞は体内で生まれているので、体の一部でもあります。それゆえ、化学的にがん細胞だけを区別して攻撃することの難しさが、がん治療の大きなハードルといえます。今回、岡山大学が発表した技術は、免疫細胞にウイルスを乗せることで、がん細胞のみに薬を送り込むという技術です。

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がん細胞を識別して攻撃することは困難
がん細胞は患者の体の中から生まれたものです。体の一部といっても差し支えなく、外から侵入した異物と区別することが困難です。がん治療の難しさはある意味でそこにあり、例えば抗がん剤はがん細胞だけで攻撃するわけではなく、がん細胞が正常細胞よりも盛んに分裂することに着目して、分裂中の細胞のDNAをばらばらにするように働きます。当然、正常細胞であっても分裂中であれば巻き添えになり、それが深刻な副作用を招きます。また、分裂していなければがん細胞は生き延びることになります。

臍帯血由来のT細胞を利用して、がん細胞を狙い撃つ
12月16日、岡山大学の研究チームはがん細胞だけを破壊するウイルス製剤「テロメライシン」を、がん細胞の目印となる標的物質に効率よく運ぶ技術を開発したことを発表しました。がん細胞だけに侵入する細胞「ホゾティ」に、ウイルスを乗せて、がんを発症させたマウスに投与したところ、正常細胞には影響を与えることなく、がん細胞のみにウイルスを拡散させて死滅させることが確認されました。ホゾティは2006年にバイオ関連会社の林原が臍帯血から発見した制御性T細胞(抑制的に作用する免疫細胞)の一種ですが、臍帯血の「臍(ほぞ)」とT細胞の「T」から「ホゾティ」と命名されています。

他人の臍帯血を使うと、拒絶反応が起こる
他人の臍帯血由来であるため、拒絶反応などの問題を解決しなければ、まだ実用化には至りませんが、がん細胞だけを狙って攻撃出来るかどうかは、がん治療の大きなテーマといえます。全身にがん細胞が散らばり、既に手術が出来ない患者や、何回もの抗がん剤の負担には耐えられそうにない患者にとっては、有効な治療法になりえるのではないでしょうか。今後の進展に期待したいところです。

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