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2016-12-01

薬の値段の決め方

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高額との批判を受け、改定の時期を大幅に前倒しにして、50%もの薬価引き下げが行われるオプジーボ。通常では考えられない値下げですが、この薬価とはどのように決められるのでしょうか。

通常のビジネスではありえない50%値下げ
高額な薬価が問題視されたことを受けて、オプジーボは2年に1回の改定の時期よりも1年以上前倒しで薬価が50%も引き下げられることになりました。通常のビジネスであればいきなり価格を半分に引き下げられたら、とても成り立たなくなります。今までの薬価は何だったのだという別の批判まで出ているようですが、そもそもこの薬価とはどのように決められるでしょうか。
保険診療では薬の値段は国が決める
通常のビジネスでは売り手が価格を決定します。ところが、健康保険という制度がある我が国では、薬の値段を決めるのは国(厚生労働省)です。健康保険は平等に医療を提供するのが目的ですから、市場原理が入らないように、国が薬価を決めているのです。健康保険の適用されない薬については薬価はありません。自由診療で処方している治療期間が独自に決めてよいことになっています。
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過去にない薬は原価と市場規模から薬価を計算
薬価を決める上では、2種類のやり方があります。ひとつは類似薬効比較方式。新しく開発した薬に類似の製品が既にある場合、それに近い薬価がつけられます。既存の製品よりも改善された点があれば、それに応じて調整はされます。もうひとつが原価計算方式で、過去に類似の製品がない場合のやり方です。開発や販売にかかったコストを、製薬会社が申告し、どれくらいの市場があるか、即ちどれくらいの患者が想定されるかによって、薬価を決めているのです。国が薬価を決めるとはいっても、原価を申告するのは製薬会社ですから、価格決定権が全くないとはいえないわけです。オプジーボは患者の少ないがんを対象に薬価を決定
オプジーボに関しては最初に薬価が決められたのは、患者の少ない悪性黒色腫の薬としてです。新薬の開発には莫大な開発費がかかりますから、小さな市場で利益を上げるためには、薬価を高くするしかありません。ところが、オプジーボの健康保険への適用は患者数の圧倒的に多い非小細胞肺がんにも拡大されました。申請から承認までは別個に行われますが、薬価は過去に決められた通りです。これによってオプジーボの使用は一気に増え、やがては財政を圧迫するのではないかと懸念されたのです。

患者全体を考えた場合の適正な薬価に
製薬会社とて営利企業。同じ薬価でしか売れないなら、出来るだけ高くなるように段取りをするのが当然でしょう。実際、オプジーボの販売元は直近の決算では過去最高益を更新していますが、ここまでの批判にさらされるのは、いささか想定外の出来事だったかもしれません。話は最初に戻りますが、薬価が半分になったというのは、患者全体を考えれば、それが適正な薬価だということです。オプジーボが悪性黒色腫に対して健康保険適用になってから小細胞肺がんにも拡大になるまで1年少々。明らかに先の見通しの立っていることに対して、もっと柔軟には出来なかったのでしょうか。

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