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2016-10-14

風邪薬の成分が膀胱がんの転移を防ぐことが明らかに

Woman wearing a mask has a cough

風邪薬に含まれる安価な成分で膀胱がんの転移や薬剤耐性を抑制出来るということが明らかになりました。再発や転移が多く、薬剤耐性が問題になる膀胱がんの治療には朗報といえます。

風邪薬の一般的な成分「フルフェルナム酸」
10月5日、北海道大学の研究グループは、風邪薬の一般的な成分であるフルフェナム酸に、膀胱がんの転移や抗がん剤への耐性を抑える働きがあることを発表しました。同大学大学院の医学研究科腫瘍病理学分野の田中伸哉教授と腎泌尿器外科の篠原信雄教授らの共同研究で明らかになりました。この成果は英国の科学誌『Scientific Reports』電子版に掲載されています。

免疫抑制を招く酵素の働きを阻害
ヒトの膀胱がん細胞をマウスに移植し、肺や肝臓、骨への転移を確認した後、転移したがん細胞を調べたところ、抗がん剤の効果を低下させるアルドケト還元酵素が、3~25倍に増えていることがわかりました。抗がん剤治療を行うと、死滅したがん細胞の周囲に炎症性物質(インターロイキン1)が放出され、アルドケト還元酵素が増加した結果、薬剤耐性の獲得に繋がります。また、アルドケト還元酵素はがん細胞の動きを制御することもわかりました。そこで、アルドケト還元酵素の働きを阻害するフルフェナム酸を投与したところ、がん細胞の動きが止まり、抗がん剤の効果も回復したのです。

膀胱がんは転移・再発しやすい
我が国の膀胱がんの罹患者数は年間約2万人。毎年、およそ8000人が亡くなっています。膀胱がんは再発や転移を繰り返すことが多く、シスプラチンなどの抗がん剤が使われますが、薬剤耐性をどうするかが課題になっています。新薬の価格高騰が問題になっていますが、こうした安価な成分を上手に利用するという研究は喜ばしいことだと思います。

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