toggle
2016-10-13

日本にはいない「がんの専門医」

Male doctor portrait

我が国のがん医療のひとつの問題としてがんを診察する専門医が、健康保険制度の中では存在しづらいことが挙げられます。がんと診察された入口の段階で、適切な治療を組み立てられれば、治療の成果はもっと上がるのではないでしょうか。

乳がんと診断されてから何をしていたのか?
乳がん闘病中のフリーアナウンサー・小林麻央さんの近況が話題になっていますが、やはり気になるのは、2014年の秋に乳がんと診断されてから、今年の6月に夫である歌舞伎役者・市川海老蔵さんが記者会見で、これから抗がん剤治療に入ると明かすまで、どんな治療を行ったのか不明だということです。乳がんでは浸潤や転移が進んだ段階でなければ、通常は手術を行います。1年8か月もの間、少なくとも手術を行っていないことは、様々な憶測を呼んでいます。一度は問題ないといわれたのに、再度の検査では乳がんと診断され、不信感から標準治療を拒否したとか、その時点で手術は出来ない状態だったとか、どんな治療を受けるか迷っていたとか……。とはいえ、真実はご本人や関係者しかご存じないことでしょう。

診察が専門の医師がいない
ひとついえるのは、乳がんと診断された早い段階で、適切な治療を提案出来る医師の存在があれば、その後の治療も経過も変わっていたのではないかということです。我が国の医療機関の多くは健康保険制度の元で診療を行います。検査をしたり、治療をしたり、薬を処方したりすることで、経営が成り立っており、診察が専門の医師がいないのです。がんは免疫の病気であり、症状が進めば全身に転移します。ところが、現実は胃がんや大腸がんは消化器科の医師が、乳がんや子宮がんは婦人科の医師が……というように部位別に診療を受けることになります。また、保険診療である以上、進行がんに対しては限界があることがはっきりしている標準治療以外のことは出来ません。

オーダーメイドが可能な医師をパートナーに
標準治療だけに頼っていることが、がん治療の出口の問題なら、がんを全身の病気と考え、患者ひとりひとりに適した治療を提案出来ていなのは、がん治療の入口の問題といえます。昨今では自由診療も含めた選択肢の中からオーダーメイドの治療を考えていく治療設計を行っている医療機関や、様々ながん患者を診療した経験のある医師が、がん外来として診察してくれるところもあるようです。がんを治すのは、あくまでも患者自身ですが、主治医は一番重要なパートナーです。型に嵌った治療ではなく、最適な現実解を提示してくれる医師を探すことが求められます。

Share on Facebook0Tweet about this on Twitter0
関連記事