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2016-09-30

2度のがんを克服した鈴木宗男さん(前編)

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30代で衆議院議員となり、官房副長官や大臣を歴任、そして逮捕・収監など波乱万丈の人生を送ってきた鈴木宗男さん。実は胃がん、そして食道がんを克服したがんサバイバーです。政治家として、患者としても不屈の精神を貫く鈴木宗男さんにお話しをうかがいました。

 

 

「出馬を断念したら、風向きが変わってきた」

 

──はじめて「がん」と診断されたのはいつですか?
平成15年です。平成14年6月に逮捕されて431日拘留され、翌年8月末に釈放されました。その後、9月に受診した人間ドックで胃がんが見つかったんです。昭和54年からかかりつけの国立医療福祉大学三田病院で診察してもらったんですが、細胞を採取して検査したら「がん」だと。転移の可能性があるともいわれました。セカンドオピニオンとして国立がんセンターでも検査を受けましたが、やはり胃がんで転移の可能性ありという診断でした。

──逮捕に続いてのがんとの診断でこたえたのでは?
正直、人生終わったと思いました。逮捕された時でも自分は悪いことをしていないという自負があり、今に見ていろよという思いだったから乗り越えられました。そこでがんを告知され、おまけに転移の可能性ありですから……。それに平成15年11月は衆議院議員総選挙があったんです。選挙か手術かの選択になりました。

──命を懸けた選択になりますね。
命を削ってでも、選挙に出てやろうと思っていました。でも、カナダに留学していた娘が、絶対に選挙に出ては駄目だといってきたんです。手術をすれば絶対に治るから、また選挙には出られるけれど、選挙に出て手遅れになってしまったら取り返しがつかないことになるというのが、彼女の考えでした。

──父・鈴木宗男を信じているから、愛しているからの言葉ですね。
娘は長男とひと回り離れているんですよ。次男とも10歳違い。だから、「私はお兄ちゃんたちよりお父さんといた時間が短いから、出来るだけ長く長く一緒にいたい。だから、ここは我慢して、選挙よりも命を大事にして欲しい」と。また、盟友の松山千春さんも、以前は「宗男さんが命懸けでやるというなら勝負しましょう」といってくれていたのが、娘の意見にはその通りだといってくれました。そして、断腸の思いではありましたが、出馬を断念したんです。
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──戦いの場に臨むことさえ出来ず、忸怩たる思いになったのでは?
これが面白いもので出馬を断念したら、風向きが変わってきたんですよ。構造改革に反対する抵抗勢力として、わかりやすい悪役にされ、最終的には逮捕・起訴までされた私には、バッシングの嵐が吹き荒れていました。雑誌もTVも鈴木宗男を極悪人のように書いていたんですが……がんと公表してから、徐々に静かになっていったんです。

「いても立ってもいられず、2週間くらいで仕事に復帰」

──それで手術を受けられたのですね。
内心、政治家としてはもう駄目かもしれないという思いはありました。そこで、自分にいいきかせたんです。35歳で国会議員になって20年、49歳で大臣にもなったんだから、人並以上に頑張ってきたし、いい道も歩ませてもらえました。だから、ここで人生を終えたとしてもよしとしようと。でもね、手術してみたら転移はなかったんですよ。神様仏様っているんだなと思いました。

──手術の後でお感じになったことは?
5時間くらいの手術が終わって、集中治療室に向かう時、女房が私に「お父さん、転移はないから安心してください」といってくれたとか。私は麻酔が効いていて、全く記憶がないんですが、その時「それなら選挙に出ていればよかったな」とはっきりいったらしいんです(笑)。魂は選挙にあったんでしょうね。心配したのにあんまりな返事だと女房は私の頭をピシャッと叩いたそうです(笑)。

──退院後はどう過ごされましたか?
2週間だけ入院して、温泉がよいというので湯治に行きました。1か月くらいじっとしていろといわれましたが、この性分ですからいても立ってもいられず、2週間くらいで仕事に復帰しました。

──抗がん剤治療は受けられたのですか?
受けませんでした。医師からは栄養剤だけ勧められました。医師からの説明を受けて、がんとその周囲を多めに切除しているんですが、これもよかったのではないでしょうか。

──胃を切って、食事で苦労されたのでは?
最初は食べ物が入りませんでした。医師からは「消化のよいものを少しずつ分けて食べてください」と指導されたので、徹底的に実行しました。当時、同じく胃がんの手術をされた王貞治さんから「のどが詰まる」との相談があって、「何を召し上がったんですか」と聞いたら術後2か月でラーメンを食べたと。「そりゃ駄目です」って(笑)。麺類は1年経ってうどん、2年でそば、3年でやっとラーメン。焦りは禁物です。

 

後半に続く

 

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