toggle
2016-08-09

先進医療制度は「使えない」

DNA

がん保険等でよく聞く「先進医療」。優れた治療で保険で費用がカバー出来るなら、がんになった時は是非受けてみたいと思われる方は多いのでは。

先進医療は新しい治療の実験
がん保険の宣伝で頻繁に使われる「先進医療」という言葉。皆さんはどのような医療をイメージされるでしょうか。国が制度として認めているのだから、健康保険は使えなくても、素晴らしい技術ではないかと思われる方がほとんどでしょう。実情はまだ有効性の確認されていない新しい治療について、実験に協力するということです。ちなみに先進医療といえば思い浮かぶ重粒子線治療は、既に数十年も行われており、何事にも時間を要する医療の世界でも「先進」といえるかどうかは疑問です。

費用は全額負担、他の治療にも制約
先進医療にかかる費用は全額患者が負担することになります。重粒子線による治療は300万円近くかかります。実験に協力し、さらにはその費用まで負担するというのは、どうも納得の出来ない話です。また、実験という目的があるので、他の治療を受けることにも制約があります。要するに多くの不便があるため、制度としてはイメージほど「使えない」のが実情なのです。

先進医療は混合診療
では、先進医療に(有効性が確認されていないとはいえ)新しい治療を受ける以外のメリットがあるかといえば、同じ医療機関で保険診療と自由診療、即ち混合診療が受けられるということが挙げられます。我が国では同じ医療機関で同じ病気に対して保険診療と自由診療を同時に行うことは出来ません。それをやるには受診医療機関を別にする必要があります。全てをひとつの医療機関で済ませるためには、保険適用になっている治療まで自由診療でやらなければならず、膨大な費用がかかります。そのため、患者は不便であっても医療機関のかけもちを余儀なくされます。先進医療という制度は保険診療の延長線上にあるので、保険適用になる部分は保険診療として同じ医療機関で受けることが出来ます。

混合診療規制の撤廃が待たれる
先進医療は平成28年8月9日現在、100種類あります。そのうち、半分近くはがん治療となっています。先進医療に入っている治療がどこまで有効かどうかはともかく、この数字だけを見ても、保険診療の範囲でがんという病気に対処することは困難であることが、よくわかります。健康保険はいわば国民全員で出し合ったお金で、患者を救済する制度ですから、その適用に高いハードルを設けるのはわかります。しかし、費用を全額負担する自由診療との組み合わせに制限があるのはいかがなものかと思います。健康保険が利用出来る治療は保険診療で、それ以外は患者の意志で自由診療で、ひとつの医療機関で制約なく受けることが出来る状況が待たれます

Share on Facebook0Tweet about this on Twitter0
関連記事