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2016-07-05

進行がんは手術出来ない

Cancer cells - 3d Rendering一般にIII期の一部からIV期に相当する進行がんは、手術出来ないと診断されます。患者が元気でも手術出来ないとは一体どういうことなのでしょうか。

早期がんは局所病、進行がんは全身病
早期がんと進行がんの違いは、がん細胞が転移しているかいないかです。いいかえるなら局所病と全身病の違いです。がん細胞の塊が一箇所(局所)にまとまっていて、周囲に飛び散っていないなら、それは局所病になります。そのような早期がんは局所を対象とする手術で、腫瘍が取りきれたら、概ね大丈夫です。しかし、腫瘍が周辺組織まで広がり、がん細胞を飛び散らせ始めている進行がんは、既に全身病だと考えなければなりません。

進行がんには全身療法が必須
全身病を治すには、全身を対象とする全身療法が必要です。例えば、全身に行き渡る抗がん剤です。標準治療でも進行がんにはほぼ必ず抗がん剤による化学療法を実施します。その薬は散らばったがん細胞を叩くために投与しているのです。そして、原則としてIV期くらいまで進んだ進行がんは、手術の対象になりません。II期の後半からIII期あたりのがんは手術を実施したら、速やかに全身療法を行わなければいけません。

手術で飛び散ったがん細胞が暴れ出す
転移している可能性が高いがんを、手術などの局所療法で治療すると、飛び散っていたがん細胞は爆発的に増殖してくることがよくあります。腫瘍を手術で取り去ると、そこには傷が残ります。すると、体内の細胞は損傷した組織を修復するために、細胞増殖せよという信号に当たる物質を、盛んに分泌します。体内の細胞は様々な蛋白質をやりとりして、調和の取れた活動をしています。細胞増殖信号もそうしたコミュニケーション手段として分泌される蛋白質のひとつです。こうした信号物質は他の細胞の表面にあるアンテナ(受容体)にくっついて信号を伝えます。

放射線でもがん細胞が増加
ところが、具合の悪いことにがん細胞の表面にはこの種のアンテナが正常細胞よりもたくさん存在するのです。手術後に大量に分泌される細胞増殖信号は、正常細胞だけでなくがん細胞の爆発的な増殖をも促してしまうのです。体に傷をつけると、飛び散っているがん細胞が暴れ出します。これは手術に限ったことではなく、保険診療で一般に使われる放射線にも先端治療である陽子線や重粒子線にも当てはまります。

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