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2016-07-01

殺細胞剤から分子標的薬へ

殺細胞剤は進行がんを治しきれず、免疫力の低下を含む副作用を伴います。その限界を踏まえ、仕組みの異なる薬が開発され、1990年代から広く使われるようになりました。

日本では化学療法の中心は殺細胞剤
日本の保険診療では化学療法の中心は抗がん剤、即ち殺細胞剤が担っています。大抵のがんに使われ、使用量が最も多いのですが、前立腺がんなどで使われるホルモン療法剤や、免疫を少し刺激する免疫賦活剤なども保険適用になっています。

殺細胞剤の限界を踏まえた新薬
化学療法の代名詞となっている殺細胞剤は、がん細胞を殺すための薬です。しかし、がん細胞だけを狙い撃ちにするわけではなく、分裂中の細胞を殺します。そのため、治療中に分裂していれば、正常な組織の細胞や免疫細胞も巻き添えにしてしまいます。どうしても避けられない副作用が伴い、免疫力も低下させてしまう殺細胞剤の限界は、がん治療の大きな課題でした。そして、新しい仕組みのがん治療薬が作られるようになりました。

腫瘍の成長を妨げる分子標的薬
近年、新しく開発されるがん治療薬の主流は、新しい抗がん剤ともいわれる分子標的薬になりつつあります。殺細胞剤はがん細胞を殺すことを狙っていましたが、分子標的薬は薬の力だけでがん細胞を殺すという発想には立っていません。細胞の増殖を妨げて、腫瘍の成長にブレーキをかけるのが、主な目的です。

温存した免疫でがんを攻撃
分子標的薬には低分子分子標的薬から抗体医薬品まで様々なタイプがあります。しかし、ほぼ共通しているのは、免疫細胞にダメージを与えずに温存しながら、主に細胞の増殖を抑える作用を発揮することです。がんだけでなく正常な組織にも作用するので、副作用が出ないわけではありません。しかし、正常細胞や免疫細胞を巻き込んで殺すことはしません。温存した免疫の力で勢いの止まったがんを退縮させていくことを狙っているのです。

欧米では分子標的薬が主流に
日本の保険診療では分子標的薬はまだまだ普及していません。一部の限られた部位のがんにしか保険適用となっていないからです。しかし、薬の仕組みからいえば、分子標的薬は部位に関係なくほぼ全てのがんに使えます。実際、欧米では分子標的薬の使用がどんどん増えています。殺細胞剤も使われていますが、分子標的薬が主役になりつつあります。このままだと日本のがん医療は世界に遅れを取る可能性があります。

分子標的薬は免疫系のがん治療薬
また、日本では分子標的薬の使い方に問題があります。薬の設計上、単独投与すべき分子標的薬を、保険診療では原則的に殺細胞剤と併用しています。それでは免疫細胞にもダメージを与え、分子標的薬の効果を存分に引き出すことは出来ません。分子標的薬はがんの増殖を食い止め、NK細胞にがん攻撃を促す免疫系のがん治療薬なのです。

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